家で仕事をしていると、隣の部屋で子をあやすためにYouTubeで動画を流していることがしばしばある。こども向けの歌をうたのお兄さんが歌っているみたいのがあって、僕がこどもの頃から脈々と受け継がれている歌も多い。
その歌のなかでも「おべんとうばこのうた」なんかはどの世代にも通じる有名ナンバーなんじゃないかと思う。これっくらいのお弁当箱におにぎり詰めちゃうあの歌だ。「これっくらい」という直感的な表現に右脳派が考えた歌詞なのではと思わせるものがある。左脳派だったらもっと具体的にお弁当箱の説明を始めてしまう歌詞を書くんだろうか。まあ具体的な数字（12cm×10cm）とか材質に触れ出す歌詞だったら「そ、それはいいからお弁当を…」となるんだろうけど。
さんざんこすられまくったネタだと思うし、子育て時にこの歌を聞いた世の親御さん方ほぼ全員思っているんじゃないかと思うのだけど、こう思わずにはいられないのだ。
タンパク質、もっと摂らせてあげて…！
何せご覧の歌詞だ。
これっくらいの おべんとうばこに
おにぎり おにぎり ちょいとつめて
きざみしょうがにごましおふって
わからんよ、おじいちゃんがゲートボールに行くときにおばあちゃんが持たせてあげたお弁当かもしれんからね。それならおかずのラインナップから人生の深みすら感じる。見た感じ煮物とかばかりっぽいから塩分だけは気をつけてというくらいことくらいしか言えない。いや、おじいちゃんは運動（ゲートボール）をしに行くのだから汗をかくのだし、むしろ濃い味で炊いてあったりするおばあちゃんの思いやり弁当としてそっちの方向性のお弁当の可能性もあるけれども。
でもたぶんこれはこどものために作ってあげるお弁当なんじゃないかなと僕は思うのだ。そうなると如何せん献立が渋すぎる。遠足で楽しみにしていたお弁当タイムにふたを開けてこのお弁当だったら空を仰いでそっ閉じしちゃいそうだものな。せめて、せめて卵焼き。
しかし実はこれはまだ改善されたお弁当だったのだ。もしかしたら引用した歌詞に違和感を感じたひとがいるかもしれない。そんなあなたはきっと僕と同世代。
「さくらんぼさん」の部分、以前は「さんしょう（山椒）さん」だったのだ。
ショック！かろうじて存在していた色味が消えた。というかむしろあまりにも茶色すぎるだろうとさくらんぼさんが抜擢された説まである（別にない）。あと真偽は不明だが、にんじん、さんしょ、しいたけ、ごぼうで2、3、4、5とカウントアップされるというギミックまで仕込んでいたらしい。昭和の歌ならそういうのやりそう。1の立場がないのがやるせないところはあるが。”いちごさん”とかでねえ、やりようあったでしょうに。変小節になりそうだけど。
けっきょく、このお弁当にタンパク質を入れてあげるのだとしたら何がベストなのだろう。お肉とか魚とかが入っていれば、僕だったらベストだなとは思うけど、このお弁当の世界観、統一感を大事にするならやっぱり卵焼きくらいに留めておくべきなのかもしれない。それとも逆に差し色みたいな感じでまったく脈絡ないところから引っ張ってきて高タンパク質に全振りしてプロテインとかいれちゃう？プロテイン焼きとかっていって溶いたプロテイン焼いたやつ。そんなものないだろうけど。
現代となっては作り手、食べ手がマッチしないように感じてしまう「おべんとうばこのうた」であるが、そこは人気曲。簡単には引退させない。最近は「これっくらいのお弁当箱」にサンドイッチを詰めるらしい。そう、サンドイッチバージョンの歌詞が存在するのだ。今日はじめて知った。歌詞は以下との由。
これっくらいの おべんとうばこに
サンドイッチ サンドイッチ ちょいとつめて ♪
からしバターに マヨネーズぬって
いちごさん ハムさん
きゅうりさん トマトさん
まるいまるい さくらんぼさん
すじのはいった ベーコン
おじいちゃんがゲートボールに持っていくお弁当感がだいぶ減少した。むしろきちんと幼児に持たせるためにうっきうきでお弁当をこさえてあげる映像が見える。ハイカラなおばあちゃんだってパン派のおじいちゃんもいようけれども。サンドイッチのことハイカラって言っている時点で僕もゲートボール場行きだ。茶色い弁当持って。
なんだかんだと茶々をいれてみたけど、もう立派な中年なので元のバージョンの「おべんとうばこのうた」のおかずでもけっこう喜んじゃうなと密かに思っている。特に山椒がアツい。しいたけもおいしいしねえ。こどものころに入れてもらって喜ぶNo1おかずは手羽元の唐揚げだったけど。今の時期も相まって運動会のお弁当で食べたことを思い出すな〜。エモ。
今度お弁当もって大きい公園でも行こう。
