普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

言い返してなんぼってこともないじゃない

先日の夜、自転車のライトを点けるのを失念し、無灯火で運転してしまった。それは僕が悪い。100%悪い。警察に注意されたりするのは当然であるし、注意を受けたらすぐさまライトは点ける。だがしかし、然るべき人物から然るべき注意のされ方をされないといくら僕が悪いとはいえなんだか腑に落ちないものはある。

その無灯火をしてしまっていたとき、僕は自転車で路地をゆるりと走っていた。都心の路地は街頭がふんだんに設置されており、正直なところライトを点け忘れてしまっていることに気づかない程度に視界は悪くない。(自転車は、ですけどね。車からみたら当然危ない)

そんな視界の中、正面から中年女性が歩いてきた。それなりに距離が離れていても中年女性だな、くらいには周囲は暗くもないので当然すれ違うまでにきちんとよけられるよう女性との距離を作り出した。

そして女性との距離は安全な幅があるまますれ違おうとしたそのとき

「無灯火で見えないんですけど!」

と、吐き捨てていったのだ。

僕は本当に咄嗟の頭の回転というものが遅く、一瞬で自分に言われたことと気づかず特に何を言うでもなく通り過ぎてしまったのだけど、そこからしばらく進んでから「あ、今の自分に言われたんか」と気づき、その次の瞬間には「ほ〜…無灯火なのがよく見えてるじゃねえか…」と少しイラとしてしまった。いやあ、心が狭い。お恥ずかしい。

もちろん、僕が無灯火で自転車乗ってしまっているわけだし、ライトをつけてごめんなさいする案件である。ただね、その中年女性も無灯火を注意するなら言い返される可能性のある隙を見せてほしくなかったなと。「危ないからライトつけてください」とかその類のことを言ってくれれば僕も「あ…すいやせん」ってなるわけで。無灯火で自転車が見えていなかったというのは女性からしてみたら事実ではないことを述べて注意喚起を促しているということになるのだ。

のだ、じゃないですよね。なんだかいきなり注意されてなんかくよくよしちゃったもんだからなんか言いたくなってつい愚痴ってしまった。論点をすり替えたうえに細かいことについて言及して相手を詰めようとするのってなんかモラハラっぽさあるな。ふだんはそんなことしないですよ、念の為。ただその場で何も言えなかったことがなんとなく悔しくなってきてしまったというわけです。器がおちょこ裏で重ねてお恥ずかしい。

でもこういう論点すり替えだの、1を100にして論破していくというのを即座に繰り出すというのが弁護士だったりするのだろうな。なにせ犯罪をしていたひとが犯罪をしていなかったことになることすらあるのだから。弁護という言葉が使われているが、内容によっては詭弁師とも言えるかもしれない。詭弁師っていうととたんにゲームとか漫画とかに出てきそうな職業になるな。そして正義の詭弁師など絶対にいなそうだ。

こういったしょうもないことは頭の中でぐるぐると生み出されていくのだけど、咄嗟のときにベストなリアクションが取れないというのはどうなんだろうなと我ながら思ってしまう。ただ、この無灯火の件も即座にさっきのような反論をしてしまえていたらいらない争いも生まれていたわけなので、いまのままというのもある意味平和的でいいのかもしれない。あと自転車のライトはきちんとつけましょう。おまいうが過ぎる。