普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

盛りそばを「もりそば」と書くとよりもっさりしていそう

今週のお題「盛り」を見かけ、真っ先に思いついたのが「盛りそば」である。盛りそばといえば海苔の掛かっていないざるそばというイメージではあるが、それは正解でありながらも完全正解ではないらしい。

そばが麺状で提供されるようになった当初、いわゆる盛りそばしか存在しなかったそうであるが、この時点では特にそう呼ばれることはなく「そば切り」と呼ばれていたという。時代が降り、「いちいち麺を持ち上げてつゆにつけるなんてまどろっこしいことやってられるかい!よっしゃ、直接汁ぶっかけたろ!」的なムーブメントがおこり「ぶっかけそば」いわゆるかけそばが生まれたのだとか。で、そのかけそばと従来の盛り付けで提供されるそばを区別するために「盛りそば」という呼び方になったらしい。

さらに、盛りそばの中でも水を切りやすくするためとかそういった理由でざるに盛りけて提供されるスタイルも考えられ、それを「ざるそば」と呼ぶようになった。

せっかくざるに鎮座しているんだから(かどうかは知らないけど)そばの実のいいとこ使ったり、当時高級だったみりんをそばつゆに使った高級志向を目指したところスマッシュヒット。高級路線も庶民派路線も流行りを狙ってざるに盛り付けられるようになったものだから、高級路線にはその品に似合うようにシックな黒、海苔を施したのだ。

最後のあたり適当だけどまあざっくりそういうことらしい。説明で長くなってしまったけど、僕が気になっているのはそこから先の話で、当初はグレードアップの証であった海苔であるが、現在は海苔が乗せられていたとしても盛りでもざるでも海苔以外の差があることはほぼないという。

しかしそば屋にいくと盛りそばとざるそばは別々で存在しており、その区別は海苔がかかっているかどうかのみである。なのに!なのにですよ!100円くらいの値段差があるわけなんですよ。どう思います?これ。

あの盛られたそばにちょこっとかかっている海苔、どう多く見積もっても1g程度だろう。それなのに100円ということは1gで100円、すなわち100gで10,000円である。シャトーブリアンに迫る勢いだぞ、海藻のくせに。ちなみに今日の銀のレートは1グラム112円らしいのでざるそばの海苔は銀程度の価値はあるということだ。

そば屋というそば屋をめぐり、オーダーされたざるそばの海苔の部分だけを略奪していく団とか現れてしまうんじゃないのか。大丈夫なのか。いや大丈夫でしょうけど。

なんかもう納得いかなくて最近の陰謀論でブームの銅が値上がりするから10円玉集めてますみたいな話になってきてしまったな。聞いたところによると10,000円を全部10円玉にして大事にとっているひとなんかもいるらしい。貨幣価値のパラダイムシフトでもおきればまあ…とは思うが、10,000円分の10円玉が10,000円札よりも価値を見出されるとしたら袋に詰めて鈍器として扱うとかだろう。ざるそばの海苔だけを略奪する団がはびこる世界になったら防衛グッズとして役立つと思う。

てね、100円やそこらでちいせえなあと思われてしまうかもしれないけれども、実際のところ100円多く払うのに文句があるわけではなく、「なんかその感じ嫌だな」というのあるじゃないですか。最初は意味があったけど、形骸化してしまってお金のやりとりだけが残っている因習としか言えない。たぶん引っ越しのときの礼金とかと一緒の類のやつだ。

ほら、そう考えるとまあそうかなと思えてきませんでしょうかね。思えませんよね。僕もそう思います。ざるそば最高!

って盛りの話なのにざるそば礼賛になってしまった。海苔の分だけ値段盛ってますよねということでここはひとつ手打ちにしていただきたいっす。

盛りざる兄弟