普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

ひとを狼狽させるカニ

どれだけ見聞を広めようとも世の中には理解できないものがある。といって僕が広く世の中を見聞きしたわけではないのだが、風変わりなものへの耐性というものはひとよりある方だと自負している。

それでも見た瞬間にたじろぎ、狼狽するようなものは世の中に溢れている。それがおもしろい。

まあ御託はよいのでひとまずこれを見てもらおう。

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いまいち自信をもって断言はできないのだけど、さるかに合戦の一場面かと思われる。

さるかに合戦について細かく説明する必要もないかとは思うが、底意地の悪い猿に母カニを亡きものにされ、その亡骸から生まれ出でた子ガニが仇をうつという話だ。

細かいディテールの違いはあるようだけど、子ガニは他にも猿に嫌がらせをされていた連中と結託し猿に復讐を企てる。仲間は臼、栗、蜂、牛糞だ。

猿、節操なさすぎだろう。有機物、無機物、排泄物とあらゆるものに嫌がらせをしてまわっているなんて。特に牛糞相手にどんな嫌がらせをするんだ。そして栗に嫌がらせってめちゃくちゃ小物感あるな。友達いなそう。

とにかく上述の仲間たちと猿に復讐を果たしているというのが画像の場面である。ちなみにオーソドックスな流れだとこのあと猿は死ぬそうな。仇討ちではあるけれど、私刑でもある。

かちかち山なんかにしろ、昔話の復讐ってやりすぎなケースが散見される。勧善懲悪でスカッとしたかった時代なんだろうか。これらが今発表される作品だったりしたら確実に炎上するだろうな。

さるかに合戦に対して今ふれて思うこともある。しかし。しかしだよ。

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これを放ってはおけないだろう。もうさるかに合戦とかどうでもいい。なんだ、お前は。

大胆すぎる手法でカニを表現しにきている。これを雑ととらえるか前衛的ととらえるかで意見は分かれるところだろう。しかし僕は夢中だ、こいつに。

この絵を見たのはだいぶ前になるのだけど、それまでにさるかに合戦のカニをこのように表現しているのを見たことなかったし、この絵を見て以来今までにも同様だ。

臼に関してはまあこうなりますわなというデザインだ。特に違和感はないというか、イメージできる範囲の擬人化だ。それに合わせるとカニもこのデザインとなるわけか。いや、ならんて。僕のイメージする力が足りないだけなのか。だとしたらもっと想像力というものを養わなければ。あと猿、長くない?

 

冒頭で述べた理解のできないものとはまさにこういうものなのだ。しかし理解できないのがまた良い。そしてその出会いを日々望んでいるともいえる。

この絵を描いたひとにとってはさるかに合戦の登場人物をこうイメージしていたのだな。この調子で栗と蜂と牛糞も描いて欲しい。とくに牛糞。カニと同じ手法でいったらほぼハードポルノだ。前代未聞、摘発されるさるかに合戦となることうけあいである。なかなか刺激的だ。

 

そもそもなんでさるかに合戦?というところはさっぱり忘れてしまったのだけど、都内の公園で撮った写真だったと思う。

このレベルのものにまたぜひ出会いたいし、そうなるよう観察眼を養っていこうと思う。