普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

よどんだ労働の日々

バンド活動をしていたころ、とにかくバンドのために時間を融通できるようなバイトを選んでいた。そのなかで思い出深いというか、インパクトのあったバイトというのがいくつかある。

たとえばデバッガー。リリース前のゲーム等のバグチェックをする仕事だったのだけど、従業員がなんというかまあ偏執的というか、有体に言ってしまえばオタクっぽい方々が多かった。ひとが悪いとは思わないけれど、やっぱり特徴的なしゃべり方するのだなあと思ったものである。

始めたばかりの時はゲームのデバッグでまあまあなゲーム好きなのでこりゃええ仕事じゃわいと優雅にこなしていたのだが、この会社はパチンコ、スロットのデバッグもやっており、だんだんと比重がそちらにばかりになっていき、日がなスロットのドラムを眺める事となる。そちら方面にまったく興味がないのでつまらないとかつらいとか通り越して無我の境地へと意識を飛ばすことでしか対応できなかった。

その仕事も最初はサンシャインに入っている大手企業のスロットを大勢でデバッグしていたのに、そのうち上野の倉庫みたいな部屋にスロットが1台置かれた部屋でひとり、一日中スロットを回し続けるとという地獄のような業務内容になっていったのだ。今となってはあれが業務にといえたのかどうかも怪しい。もしかして左遷でもさせられてたのか、僕は。やめさせ部屋か、あれは。

こうして無我の境地でもどうにもこうにもなりきれなくなり職場を去った。あれを続けられるひとはすごい。たぶん幽体離脱とかできるタイプのひとたちだと思う。魂を飛ばしてスロット回しながら別のことでもできるようにならないと心がもたないですよ、あれは。

 

また別のバイトで印象に残っているのは検品のバイトである。様々なお店の棚卸しを代行して行うという業務内容だ。

この仕事全般なのか、バイトしていた会社だけなのかはわからないけれど、ひとも環境もかなり劣悪であった。

まずひと。気づけばいつも誰かの文句をいうか粗探しをしている。あとはスロットの話かスマホゲームの話。特定の誰かではなく、どっかで買い揃えてでもきたんかというくらいそういうひと揃いだったのだ。ストレートに言ってしまうと性格のよくないひとが多かった。長く続けているひとほどその傾向は色濃く現れていたようだ。

そして就業環境もまた芳しくなく、時給そのものは夜勤帯の平均よりも少し高いくらいだったのだけど、なにしろ仕事内容が棚卸しなので、毎回赴く店舗が異なる。そうなると必然的に移動も多くなり、移動時間もそこそことられるようになるのである。会社所有の8人乗りくらいの車に乗り込み目的地へ向かうのだ。もうほぼドナドナですよ。

そして、都内だけでなく、近郊のエリアの仕事も受注していようなので、埼玉、神奈川、千葉などへもたびたび棚卸しに行くこととなる。

まあ、片道2時間くらいですわな。往復で4時間。なんと、この時間時給が発生しないんですよ!がっちがちに拘束されているのに。仕事のために時間をさいているのに。

たしかに棚卸しという業務そのものは行っていない。業務時間外といえばそうかもしれないけれど、あれはどうかと思ったな。業務時間と移動時間あわせて12時間越えとかざらだったもの。しかも休憩なんかもはさむので時給が発生しているのは12時間拘束超えていても7時間くらいだったりとか普通にあった。今考えるとほんとすごい環境だな。

こういった環境にしばし身を置いた結果、ああ、ここは数ある職業の中でも流れ流れて本流からもはずれ、最後にたどり着く河のよどみのような場所なのだなと思わされた。

おかげできちんとした仕事を探そうという意欲が湧いたので人間よどんでみるものである。ザ・前向き。

 

ふたつともバイトと書いたけど、契約形態は個人事業主とかそんな感じの契約だったかもしれない。だからあんな無茶な働かせ方だったのかも。そのあたり全然知らないので実際のところどうなのかはわからないけれども。

 

いまは普通に会社員となっているのだから人生どうなるかわからないですよな、本当に。

そうなってくるとこのまま会社員続けていくのかどうかもわからないって話になってしまうけれどもそういうこというと怒られそうなので内緒にしといてください。