普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

夜のお店って行っておくべきなんですか?

最寄りの駅で電車を降り、ひょろひょろと階段を下っていた。

「キャバクラ行ってもいいけどさー、金ねーよー」

という声が聞こえ、声の聞こえる方向を確認すると、声の主は大学生くらいと思しき若い男性グループであった。あの年齢でキャバクラとか行くんだと驚きながらも、そもそもあのくらいの年齢ってキャバクラに行くまでしないと女子との絡みがもてない年齢か?と赤の他人の人生に余計な思いを巡らせた。

思えばキャバクラに行ったことがない。

キャバクラのみならず、いわゆる夜のお店といわれる種類のお店は軒並み行ったことがない。あまり行きたいとも、行く必要性があるとも思わなかったというのが理由なのだけど、人生経験として一度くらい行ってみたほうがいいのかもしれないのかなと最近は思わないでもない。

行ったことがないとは言いつつも、ガールズバーには一度だけ行ったことがある。行っとるやんけと思われるかもしれないが、あいや 待たれい。

行った店がガールズバーであっただけで、ガールズバーの醍醐味というのは一切体験していないのだ。なのでカウントされないだろうと思っている。

まず、一緒に行ったのは妻(当時は彼女)だ。当時住んでいた街の最寄り駅前で新しく飲み屋をはじめたのでよかったらきてくれとチラシ配りをしていたので、せっかくだし行ってみようということになった。この時点ではガールズバーであることは知らされていない。

店に到着し、ホールの男性従業員とちょっとした会話から互いに音楽が好きという話で盛り上がり、しかも好きなバンドがバンドアパートであると判明し、僕はバナパの原さんに抱っこしてもらったことあるんですよ、などとちょいとした自慢話を挟み大盛り上がりとなった。そしてその店員さんはバナパの原さんにちょっと似ていた。

そのうえバーテンさんはデスメタルフリークであることも浮き彫りとなり、ビシッとキメたバーテンスタイルの白シャツの下はおどろおどろしいデスメタルTシャツを着用していらっしゃった。

もうまさに水を得た魚のようにマシンガントークを繰り広げ、愉悦のひと時を過ごしたのであった。男のひととな。

肝心のガールはどうしていたかというと、カウンターの中でバツが悪そうな笑顔でたたずんでいた。男性店員がこの娘も音楽好きなんですよ、と話をふったりしていたので、なにが好きかと尋ねたらチャットモンチーだという。デスメタルバンドアパートにかなうわけないので、「へー」くらいのテンションで二言、三言会話をし、ダークサイドの会話へ再度沈んでいった。

こんな調子だったので、ガールズバーに行ったとカウントはされないのではないかというのが僕の言い分である。これはカウントされないでしょう、さすがに。

でも大人のお店の一切合切を経験していないまま不惑を迎え、多くの男性の知る喜びを知らないままでよいのかと不惑にして惑っているわけである。

ま、いいのかな。あんまり合わなそうだしな、そういう系のお店。明らかに話合わせにきてくれてるんだなーという会話ってつらいものな。あんまり一般的な会話ができないので余計にそういうことになりそうだ。それでも、それに気づかせないようなトークを繰り広げることができるひとというのもいるのだろう。そして夜の蝶として華々しく輝いているのだろうな。

職場の近くにある「べろ〜ず」というガールズバーにはそういうひとはいなそうだけれど。なにしろ看板にあるキャッチコピーが「みんなでべろべろになろう!」だ。通い続けたら脳が溶けそう。

 

そういえばもう一軒だけ夜のお店に行ったことがあった。こちらはホストクラブだ。こちらもこちらでカウントされないには理由がある。

でも長くなってきたのでこの話はまた別の機会にでも。