普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

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飛行機に乗ったことがない。

はたして飛行機の乗り心地というものはどんなものなのだろうかと思いを馳せる。

実際のところ電車に乗っている感覚と大差ないのかもしれない。

でも初体験のときはものすごくドキドキできると思うのだ。なにしろもう40歳になろうという年齢まで一度も体験したことを体験するのだから。

ドキドキすることが段々と減っていくなか、この年齢まで飛行機未経験というのはある意味お得とすら言えるのではないかと思う。

 

今年、ぼんやりと目標としてかかげているのが飛行機に乗るということとドラムを始めるということ。

 

飛行機に乗りたいという目標ってなんだか昭和っぽいというか、高度経済成長期の思想みたいだ。

かといって、その時代のように自分の中の景気がよくなっていく予定もないわけだけれど。

 

高度経済成長期を生きたひとたちは初めての所作について作法のようなものを大事にしていたように感じる。それがいわゆる団塊世代的な思想なのだろうか。

普段作法などは気にする方ではないけれど、飛行機に乗るときばかりはそのあたりを意識してみたい。

せっかく40年間未経験でいたのだ、その初体験は大切に執り行いたい。

飛行機へ馳せる想いはもはや恋する乙女のそれに等しい。

なにかを思い始めるとすぐ恋する乙女の思考になる。

40歳のおっさんの心のなかに恋する乙女が存在しており、なにかあるとすぐ顔を出す。

我ながらどうかとは思う。しかし、恋する乙女はストロングだ。少しの障害など思いひとつではねのけられるパワーがある。

そうかと思えば些細なことでひるみ、落ち込む。

僕の中の飛行機に対しての思いも同様で、上空からの景色を空想し、高揚感を得もするが、同時に事故などに怯え、二の足を踏みそうになる。

 

いつだかに聞いた話で、車の事故よりも飛行機の事故の方が圧倒的に少ないからむしろ空の方が安全だよ、という話があった。

なるほど、と思えそうな話ではある。

しかし考えてみてほしい。絶対数が違うではないか、行き交う物の数が。

飛行機も車ほど飛んでいれば同じようなものなのではないかと感じるのだった。

ただ、パイロットとしての専門性などそういったことまで考えればやはり飛行機のほうが安心はできるものかもしれない。

 

あとはハイジャックとか怖い。

国内線をハイジャックするというのはあんまり意味がないような気がするのだけど、その意味とか考えないで国内線をハイジャックしてしまう思想と行動力が怖い。

そういうひとは先の事とかジャックのプランとか考えてないから思い通りにいかなかったりしたら機内でかんしゃくを起こしそうだ。

自分が操縦できるわけでもないのにちょっとイラっとしたとかそんな理由でパイロットを手にかけかねない。

そして機内一同、犯人を含め運命をともにすることになるのだ。

 

などと一度ネガティブなことを考え始めるとすらすらとネガティブなシナリオを考え付いてしまうどこに乙女性があるのか。

やはりただの40歳のおっさんだった。

 

きちんと自己を認識し、おっさんとしての自覚と作法で今年は飛行機に乗りたい。