普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

たぬきが完全に悪いけどうさぎも充分反社

相変わらず子に見せるために毎晩昔話に触れている。久々に触れる昔話の数々は子供のころに読んだり聞いたりした時とはやはり印象が異なる。

かちかち山についても何点か気になるところがあった。細かい話はウィキペディっつぁん頼むよ。

ja.wikipedia.org

おじいさんを悲しみの淵に沈めた性悪たぬきをおじいさんに代わりうさぎがこれ以上ないくらいに叩きのめすという話であるというのはみなさんも知るところだと思う。

このお話の最も衝撃的なシーンはたぬきがおばあさんを撲殺し、おじいさんに食べさせてしまうところである。子に見せているお話にはそういう表現はなかったが、ウィキペディやんを参照してもらえればわかるとおり、元々そういう話である。

えぐい。数ある昔話の中でも有数のえぐさではないだろうか。勧善懲悪とか偏ったものの見方とかは数あれど、カニバリズムに触れた物語はそうないだろう。赤ずきんとかだっておばあさん食べられちゃうけどあれは狼がおばあさんを食べているわけであって異種間の捕食だし。

しかもたぬき、きちんと調理しているというのがこれまたおぞい。おじいさんが疑いを持たずに食べているあたり、きちんと食材レベルまで加工はしたということなのだろう。汁物としたあたりも周到さを感じる。完全にサイコパスの所業である。そして報復の方法がマフィア感ある。

この時点でたぬきへの嫌悪感は到底拭えるものではなくなったし、おじいさんよく狂わなかったなと物語冒頭でこちらの感情を揺さぶられまくる展開だ。

当然たぬきが悪いのでこらしめられるのは当然という流れになるわけで、そこで登場するうさぎ。こちらも今見るとどうなんこれという存在ではある。かちかち山のくだりはまだわかる。薪を背負わせてそれを燃やして火傷を負わせちゃうっていうね。おじいさんにへの仕打ちを考えればまあ妥当。下手したらたぬきはこの時点で死んでしまってもおかしくなかったわけなので報復のレベルとしてはまあまあのレベルである。

おじいさんサイドとしてはこの辺にしとくべきなんじゃないかなというのが僕の見解である。だけどもやめない。あ、サイコパスもうひとりいた。

ここでやめないうさぎも嗜虐趣味が過ぎるし正常な精神状態を持ち合わせているとは到底思えない。正常じゃないといえば大火傷の病床に見舞いに来たといううさぎ(犯人)に普通の温度感で会って、出どころのわからない塗り薬を塗らせてしまうたぬきも大概だ。サイコパス同士なんか盛り上がって参りました。

この後も火傷を負わされ、さらに追い打ちをかけられたのにその後のうさぎからの誘いにまた乗ってしまうのも状況が理解できない。なに、たぬき、うさぎに惚れてた?そうじゃないとこれだけ自分にとって不利益しかもたらさない存在に関わる意味がわからないよ。だから最終的に沈められちゃうんだ。

なんだか悪徳社長が悪女(美女)にハマり、お金を引っ張られるだけ引っ張られた挙句、海外にパーツ取りに売り払われるみたいな話でもある。完全に社長(たぬき)が悪いのだけど、悪女(うさぎ)も普通に裏社会の人間でしかないので堅気は関わってはいけないやつだ。おじいさん、どこでうさぎと知りあっちゃったんだ。この場合大義名分をかたってやりたい放題やってるうさぎの方が厄介かもしれない。その感じがまた半グレっぽいんだよな。

ところで、僕の知るかちかち山ではうさぎの手込めストーリーに終始していて肝心の被害者であるおじいさんの最終的な状態や心理描写がなかったような気がするのだけど、これは僕の記憶があやふやなだけだろうか。

途中からおじいさんもうさぎのやり過ぎのきらいを感じとり「わしゃなんてやつに報復を依頼しちまったんじゃあ…!」と、やはり最終的に不幸が訪れそうな立ち位置になっていたかもしれない。

そしてよくよく考えれば完全に狂っているうさぎに脅威を感じ、うさぎを始末させるために別の誰か(犬とか)に依頼をしているのだろう。反社との繋がりを断ち切れず幸せになれないおじいさん。終始おじいさんビューのかちかち山が見られるって言われたら見ちゃうな。

誰も幸せにならず、誰もが狂い、悲しみの螺旋に取り込まれる。

それがかちかち山。

 

つってな。

ずっとおじいさんビューで進む物語。この裏でうさぎがうさぎがたぬきを叩きのめしている