普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

今年一番の苦悶と恥辱を味わってきました

ついにこの日がやってきた。健康診断、その日である。

会社から年1度求められる健康診断で、今まではなんだかんだと会社で用意された健診を受けず、個人で手続きしてその結果を提出していたが、今回は年齢などの観点から胃カメラを含む健診を受けなければいけないということで渋々会社のものを受けることとしたのだ。

色々不安でいっぱいだったのだけど、まず予約の入れ方がなってなかった。こういったものは午前に予約を入れてサクっと終わらせてお昼ご飯を食べながらガハハがオーソドックスなやり方なのだろうけど、よく考えもせずに午後の予約を入れてしまったのだ。

どういうことかと言えば健診が終わるまでご飯が食べられないということである。14時くらいから予約をいれたので、健診が終わるまでとなるともう夕方だ。1日中食事抜き。とんだセルフ折檻である。ただ、食べないと言うことに関しては意外に大丈夫だったりしたのだけど。やはり筋肉がない分燃やすエネルギーが少ないのだろうか。高燃費おじさんここに現る。

午後から健診ということなので、午前中は仕事をする。健康診断で仕事を抜けることは事前に同じ島の方々には伝えてあって、胃カメラが本当に憂鬱で仕方ないということも伝えていたのだけど、ここにきてめちゃくちゃに不安を煽られた。「ほんっとうに辛いから頑張ってね」「次に元気な君を見るのはしばらく先か…」などと。ただでさえ不安なところにまっくろくろのネガティブ情報を植え付けられたため「腹を切るつもりで挑みます…」と力無く返すこととしかできなかった。

こうして職場の面々に激励の言葉とともに見送られて健診会場へ舞い降りた。最初の主旨説明みたいなもので今日は胃カメラがあること、胃カメラは多少辛さはあるものの、力を抜けば案外すんなり終わることなどを説明される。「それなりの覚悟ではきていますので…」と今にも腹を切らんばかりの決意の眼で説明を聞き、健診の火蓋は切って落とされた。

様々な検査を受けながら先ほどの説明を思い出す。「胃カメラのときに使う薬の影響で検査後1時間は飲食ができないので注意してくださいね」こう言っていた。ということは早めに胃カメラを済ませておけば健診すべてが終わる頃には食事ができるようになっているという寸法なのでは。そう思いながら検査をこなしていたが、一向に胃カメラに辿り着かない。

そうこうしているうちに「次の胃カメラで最後になりますので」と伝えられる。おいーー、ボスじゃねえか、大ボスじゃねえか。確かに今回の健診のメインではあったけど、どすんと良いポジションとってんじゃないよ。

しかしこうなったら覚悟を決めるしかない。事前準備としての喉の麻酔を口に含み、徐々に舌の感覚が麻痺してくるのを空を見つめながら待った。それにしても、この舌が麻痺してくる感覚って合っているのだろうか。喉の麻酔だっていっているのに、舌ばかりが麻痺するのだ。もしかしたら無意識のうちに舌のうえで転がしているだけで喉までいっていないのではないかと思ってしまう。それくらいに喉のあたりは感覚が普通だ。

やる気とか関係なくあとは検査をしてもらうしかないのでベッドに横たわり医師がスコープをぶち込むのを待つしかない。ちなみにこのとき口には猿ぐつわのようなものをはめられ、よだれを受けるトレーみたいなものを敷かれているというその筋のご褒美スタイルで待ち構えている状態だ。

医師がやってきて、「前、潰瘍見つかったんだって?」と質問をしてきた。前述の通りご褒美スタイルの僕は答える術を持たない。すると医師がなんで答えないの、このひとみたいな顔をしたので手で「少しね」とサインを作って返した。あれ絶対わざと聞いてるだろ。「ふほひはへへす(少しだけです)」とか言わせたくて。

そんなオープニングアクトを経てメインステージ開始。知ってはいたがめちゃくちゃつらい。スコープが喉を通った瞬間にゴアグラインドもびっくりの超絶下水道ボイスが繰り出された。死因胃カメラになるかと思ったわ。ぐいぐいと挿入される胃カメラとなんだかもうよくわからない液がとめどなく口から溢れる僕。立派な医療行為であるのにこんなに混沌とした空間なかなかないんじゃないかと思う。

永遠にも感じたスコープによる責め苦も終わりが訪れた。終わった直後、少し放心してしまった。目から涙をぼろぼろと流しながら。明らかに何かあったひとである。まあ一戦交えたのには違いないんですが。

その後胃カメラを受けたベッドの端にちょこんと座らされ、スコープで撮影した写真を医師と一緒に確認をした。なんだかこのシチュエーション、ちょっとAVの撮影後のインタビューみたいだなと思った。いや、そんなことはよい。肝心の所見であるが、十二指腸に結構な炎症が確認できた。十二指腸炎らしい。まあ心当たりがあるといえばあるので妥当かなとは思えた。念の為「これは十二指腸炎確定ですか?」と聞いたら「ええ、確定です」と回答があったので十二指腸炎を患うものとして生きていこうと思う。

こうして胃カメラというラスボスも乗り越え、健康診断2022の幕は閉じたのであった。

今日は透析の日だったので健診のあとはすぐ向かわなければならない。病院につぐ病院というのも僕らしくてまたよかろう。しかし、本当に何も食べてないのでそれだけはどうにかしたいと透析クリニック近くのラーメン屋に駆け込んだ。

普段であればすぐおなかが一杯になってお残ししないことに必死になるのに、今日に関しては爆速で完食し、なんなら少し足りないくらいであった。食べないでも平気だななどと思っていたけどしっかりおなかが減っていたということなのだろうな。というのが自分でわかっていないのもちょっと不安だけど。なに、これも十二指腸のなんかなんですかね。ちなみに昨日お酒を抜いていたのでその影響もあるかもしれない。

恥辱のご褒美ラーメン



ちなみに、健診の最後でお医者さんの診察みたいなものがあったのだけど、「腎臓が悪い以外は概ね良好」のお言葉をいただけた。健診結果が楽しみだ。