自分でも意外すぎる事実でたまに思い出しておかないと忘れそうになるが、20代中盤まではお酒がほぼ飲めなかったし、好きではなかった。
それでも飲み会そのものは好きだったので誘われればほいほいと参加し飲みすぎて千鳥足になっていたし、家飲みも積極的に開催し、狭い部屋にぎゅうぎゅうに友達を呼んでは朝まで飲み、やはり飲みすぎて明け方友達全員帰った頃にひとり虫の息となっていたりした。
要はただの宴会好きだったのである。それは今もあまりかわらないけれども。
ここで注釈を入れておきたいのが、飲み会好き＝パリピとなりそうなところではあるが、残念ながらそうではない。ただの「宴会好き」なのだ。若い頃から心根が昭和おじさんだったということである。
そんな自分がお酒なら大概のものは飲めるようになり、酒の一滴血の一滴という金言を心に飲酒するようになったのはライブハウスで勤務したことが大きく影響している。
ライブハウス勤めの人間は大概が酒好きだ。朱に交われば赤くなる。それはもう真っ赤っかに染め上げられたというわけだ。自分から朱に飛び込むような勢いもあったともいえるが。
そしてライブハウスというのは驚きの低賃金である。労基法とかたぶん存在しない世界線の職場とでも言わないと説明がつかないくらいの。具体的な数字を言うと問題ありそうなので伏せるが、1ヶ月きっちり勤務しても高校生の本気バイトのほうが稼げるだろうなという程度の低賃金であった。
そういった経緯もあり、なおかつ酒も飲みたいとなるといかに安く効率よく酔うことができるようになるかが最重要課題となる。
そこで登場するのがウーロンハイだ。それもかっちかちの固めのウーハイだ。しかもギリギリ甲類ぐらいの焼酎を割ったやつ。むしろ割ったというより色付けのためにウーロン茶をたらしたくらいのデンジャードリンクが横行するのである。
ビールの方が当然美味しいけれどもコスパが悪い。固めウーハイを制することによって貧しいライブハウス勤務時代を乗り切ったと言っても過言ではない。
お酒として決して上品ではない代物をずっと飲み続けていた結果、ある日ウイスキーを飲んだときに衝撃を受けた。「うまいうえにコスパがよい！」と。当然安物のウイスキーであったが、それまで飲んでいたものよりは何ランクも上の飲み物だ。それからはウイスキーも飲むようになった。
そして数年後、透析を受けることになったとき、水分制限から固めウーハイとはいえ割りものであるウーハイは避けなければということになり、少しでも水分をとらずに効率よく酔うにはと専らウイスキーを飲むようになった。理由は違えど根底にあるものは固めウーハイを飲んでいた頃とそんなに変わらないかもしれない。
なにせデンジャードリンクの世界からやってきた人間なので、最初のうちはウイスキーなら何を飲んでもまあいけるなと思い酩酊していたのだけど、ここ最近は酒量のキャパも減少してきたことから少しお酒のレベルをあげることにした。要するにちょっと美味しいお酒を選り好みするようになったということだ。良いご身分になったもんだねえ、おい。
ウイスキーならアイラ系のピーティーなものが好みとわかってきたところで、他の洋酒が気になってくるというのは人情でなくなんというのか。
色々言い訳めいたことをわめいたところでなにかというと、最近ジンが気になっており、気になるものを買っては飲んでいる。これを言いたいためにここまでぶつくさ言ってきたのだ。
昨日買ったジンが美味しかったので紹介したいがためにめちゃくちゃ遠回りしてしまった。もはやジンの紹介がおまけみたいな割合だ。
そうまでしてお伝えしたかったのがこちらなんですよ。
コマサ ジン 桜島小みかん
ジンはもともとスッキリした柑橘のような香りはあるものだけど、これは名前の通り柑橘度がとても高い。みかん度で言ったらみかん水くらいにみかん。こういうとめちゃくちゃ安っぽく聞こえてしまうかもしれないけど、きちんと上品に香ってくるので飲みやすいことこのうえない。固めウーハイとは別の意味でデンジャードリンクだ。
いまさらっとみかん水って喩えたけど、駄菓子屋に売ってたみかん水、ご存知ですか。年齢や地域によってはもしかしたら全然通じてないかもしれないな。こんなのです。みかん水は平和な飲みもの。
良いものを紹介しようとして最終的にみかん水の紹介になってしまったけれども、上品に香るお酒が好きな方はぜひ。たぶん炭酸で割ったら無限に飲める。
あとみかん水は今希少らしいのでそちらも見つけたらぜひ。
