普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

電動自転車は坂道がない世界線への導入グッズ

土曜日。わりと早く起きて身支度を済ませる。注文していた電動アシスト自転車を店舗まで受け取りに行った。滞りなく手続きを済ませ、帰りに台湾屋台料理のお店で麻辣だのジャージャーだのオノマトペっぽい響きが豊富な丼をお昼ご飯として調達。

知らない料理だけど知ってる味。麻辣だしジャージャーだった。うまい。

お昼ご飯も食べたところで自宅への業者訪問を待ち受ける。6月頃にカンザイシロアリと思われるけったくそ悪い存在を家の中で確認してしまい、不動産屋に報告し対応を求めていたのだった。

当時はテンポよく対応してくれていたのだけど、「業者から連絡してもらうようにします」と言われてからぱたりと連絡がないまま時間だけが過ぎていたなか、先週いきなり電話がかかってきて急遽業者来訪が決まったという経緯である。

そのアポの電話をしてきた業者の電話口の方は中年女性だと思われたのだけど、個人の携帯電話に電話してきながら僕の名前も確認せずに要件を話し始めると言う豪放磊落ぶりを発揮していた。挙句「不動産屋から住所を聞き忘れてしまっていたから今住所を口頭で教えてもらってよいですか?」と、僕がこのひとの上司だったら嫌な汗をかくこと間違いないであろう切り口で住所確認をする始末。

妻にこのことを話したら「詐欺っぽい…」というリアクションだったが、これで詐欺なら杜撰すぎてお縄まっしぐらというか自分で縄を締め上げるくらいであるので逆に大丈夫なんじゃないかと思い、素直に住所をお伝えした。詐欺なら詐欺でこの先どう展開するのかおもろそうだったし。

結果、土曜に現れたのは実直そうな点検員の方だったので、アポ取りの女性が極端にアレだっただけで会社はかなりきちんとした会社であった。あと、ひととおり家の中を見てもらったけど、見られる範囲ではなんとも言えないというようなふんわりした結果であった。

「場合によっては不動産屋と相談のうえ天井に穴をあけて…」みたいなことを言っていてそうなったらなんか色々エキサイティングな展開だなと静かに心の昂りを見せたが妻はたぶんめちゃくちゃ嫌がるのでどうか穏便にことが済んで欲しい。

点検も終えてまだ14時前。この時間でふたつもタスクをこなして上機嫌となったが、突如猛烈な眠気におそわれ、少し横になるかと気を抜いたら16時過ぎと夕方近い時間。これではだらけて過ごした週末と変わらないのでせっかく新たな足を手に入れたのだからと妻と子と自転車を駆り徒歩圏内ではない初めて行くスーパーへ。

知らないスーパーは単純に楽しい。お肉コーナーを見ているだけでもふだんとの違いでちょっとテンションあがってしまうもの。特にお惣菜コーナーなんてお店の特色が出るのでつぶさに観察してしまうほどである。妻も概ね同じようなリアクションで、このあたりの価値観とか好みが近いのって平和暮らしていくのに重要な要素だなと思ったりする。

日常のアクティビティを堪能し、かといって別にそんなにはしゃぎすぎない買い物内容に落ち着かせ帰路に着く。道中、蚊取り線香のにおいがただよってきてエモみばしった感情が沸き起こる。でもそれが単純に蚊取り線香のにおいが好きだからなのか、ノスタルジーによるものなのか判断できない。そもそも、昭和生まれのわりには蚊取り線香の効果に懐疑的だったるする。ま、風情そのものというか、そんな感じのものではあると思うけれども。

ちなみにこの時点まで僕は電動アシスト自転車には未乗車であったが、夕飯の後、買い忘れが発覚し近所のドラッグストアにひとりで行くことになった際に初乗車を果たした。電動自転車そのものが人生初である。

こぎ出した際のアシストっぷりが素晴らしく、こりゃあ坂道という概念がなくなるなと感じ、別に用事もないのにふだんであれば立ちこぎ必須の坂道までわざわざ赴いてしまった。はよ買い物しなはれやである。感想を述べると世のすべての傾斜をならしたらこういうことなのかとifの世界線を現実のものとして味わったとといえる万能感であった。ちょっと何言ってるかわからないですよね。僕もよくわからないです。

これからの時期、涼しくなってくるしサイクリングとかも良いなあなどと思ったりするも、電動自転車に乗るのは主に妻と子で、僕は電動に比べたら車輪の大きさしか取り柄のない年季の入った自転車に乗ることとなるので坂道が存在しまくる現実世界で立ちこぎしていこうと思う。