普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

月に帰るとかなにヘラってんだよと思ったらほんとに帰っちゃったよ

子の寝かしつけのため、国内外の昔話が投影されるプロジェクタのようなものを購入した。

まだひとの話なんて聞いちゃあくれないのだけど、映像が動き、優しくゆっくりと物語を語ってくれるその声には一定の効果があるようで物語を再生しているとわりと眠ってくれる。ちなみに読んでくれるのは石田彰さんだったり花澤香菜さんだったりと僕でも知っているような豪華声優陣だったりする。

物語は50くらい収録されており、知っているものも多い。その中でかぐや姫があったので再生をしてみたわけなのだけど、あれはなんなんだ。

いや、話としては知っている話ではあった。お爺さんが竹林の光る竹からかぐや姫を連れ帰り、あっという間に成長したかぐや姫が公達5人に求婚されるも超塩対応。あるんだかないんだかわからない珍品を調達してこいとの難題を課す。そもそもあるんだかどうかも微妙なものだから公達は偽物を持ってきて「はい、これです!」と言ってみたり、下手すると危険な道中で命を落としてしまったりなんかして誰も手に入れることはできない。結局「ほら〜、ダメだったでしょう〜?」と婚姻を回避するという悪女ぶりをみせる。

その後はなんやかんやでお爺さんの家で生活するも、突然メンヘラを発動し「月に帰らないといけないんです…」と涙ながら語りだす。お爺さんも何をこいつは…と思ったことだろうが、実際かぐや姫の指定した日に月からの使者はあらわれる。そしてかぐや姫は月に帰りましたとさ、というたぶんみなさんも知っているかぐや姫の話だった。

まず、何しにきたん、この竹の子ちゃん(竹から生まれたという意味で)は。このプロジェクタでは細かい描写がなかったので竹取物語も少し調べてみたらかぐや姫が家に来てからというもの竹林でちょいちょい金が見つかるようになりお爺さんが富豪化していくらしいのだけど、それ以外にかぐや姫がしたことといえば無理難題で男を路頭に迷わせ、突然ヘラっておうちかえると言ったくらいだ。

昔話にありがちなお爺さんに恩義があったから恩返し的な意味でお爺さんの前に現れ富をもたらしたというわけでもなく、ランダムエンカウントである模様。なんだかもう存在がよくわからない。数あるかぐや姫考察の中にある宇宙人説も意外と真実味を増すというものである。

ただ、今でこそ宇宙人説もまあそういうふうに考えてしまうのも納得できるかなというところであるが、当時は宇宙人という概念などというもの、ひいては宇宙という概念もあったかどうかも怪しい時代なので、相当にぶっ飛んだ発想だったのだろうなと思う。

しかし逆に、そういった知識の下地がないからこそ、夜空に星以外で目立つものといったら月しかないことに対して、ありゃなんじゃってなるのは自然だし、月というものに想いを馳せ、神秘性を感じるというのもまた納得できる話である。

いずれにしてもかぐや姫のお話って意外性はすごい。記憶を消して大人の状態でこの話に触れたら"月に帰ると泣き出す→ほんとに使者がきちゃった"のくだりで「マジできちゃうのかよ!」となるとは思う。でもまあお話ってそうであるべきなのかもしれないですよね、うん。

このDream Switchというおもしろ投影機にはお話が詰まっているので、知ってはいるけど長らく触れていなかったような昔話に出会うことができるだろう。そのたびに「それどういうこと?」と思えるのはちょっと楽しみだ。

 

ちなみに、かぐや姫といえばジブリの「かぐや姫の物語」も思い出したけど、めちゃくちゃ長いわりには「それ、知っているなあ」という話だったので内容や描写をほとんど覚えていない。唯一覚えていて意外性があったのは帝の顎くらいだ。

こんな感じで天井に投影できる。