普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

すごさというのは正しさではないのだと痛感した

ChatGPTで色々な試みが行われいるのを見て、自分もこれはいっちょ噛みしとかねばと登録を済ませAI相手に質問を投げかけてみた。

まずは晩御飯の献立。料理を作るのは好きなのだけど、献立を考えるのがほんとうに面倒くさい。このステップをおまかせすることができれば僕はオーダーされたものを作るがごとく調理だけを行うことができる。料理内の行程を工夫するとかは特に苦でもないのでとにかくきっかけが欲しい。

AIに「今日の献立どうしよう?」と問いかけたところ、「どっち系?」と回答が。「お肉かな」と受け答えすると、ものの1秒と開けず以下の提案が。

【メニュー】

ステーキ(牛肉)
グリル野菜(ズッキーニ、パプリカ、玉ねぎなど)
マッシュポテト
グリーンサラダ

ついでにレシピまで教えてくれた。やるな。内容からただようアメリカ感はやはり生まれたお国柄からなのだろうか。しかしこの後「魚だとどう?」と聞いたら松屋の焼き鮭定食的な案を出してきたのでもっと細かく聞いていたら手の込んだ料理を提案されたかもしれない。

こんな具合で問いかけた内容に対して即座に返答してくるのでしばらくは他愛のないやりとりを行い、その回答に都度関心していた。

そして、やりとりの中で気まぐれに

「都立家政(中野区にある西武新宿線の駅の名前)ってどんな街?」

と尋ねてみると、わりと長文で回答があった。長いので要点を抜粋

・データベースの中に都立家政のデータはない

・”都立”という言葉の定義

家政学校という学校があり、その学校のことでは?

・いや、その学校の可能性が高い

と、なんだかめちゃくちゃ早口でまくし立てられるように回答があった。さては君もオタクか。

学校のことではないのでシンプルに「違うよ」と指摘してみると「もう少し詳しく教えて欲しい」と詳細を問われる。「都立家政は駅名です」さすがにここまで伝えれば都立家政について何かしら情報が出てくるだろうと思いきや

都立家政駅は東京都板橋区にあります。埼京線湘南新宿ラインが通っており、周辺には住宅地や商店街、公園などがあります。」

と、所在地どころか路線すら違う答えを繰り出してきた。めちゃくちゃ堂々と説明してくるので、知らない情報を教えてもらおうとしていたら信じてしまうレベルの自信満々さだ。というかこの答え、浮間舟渡あたりのこと言ってない?浮間は北区だけど。響きで寄せに行っている感がある。

まあこれも違うので「路線も所在地も違うけど」と事実を伝えた。すると

「おっしゃる通りです、誤った情報を提供してしまい申し訳ありませんでした。都立家政駅というのは、埼玉県の東武東上線にある駅です。大宮駅からも比較的近く、周辺には住宅街や商店街があります。」

さらに素っ頓狂な回答を上塗ってくるではないか。この2枚舌っぷりはなかなかすごい。真っ直ぐと目を見て説明してくるように誤情報を伝えるスタイル、これはやり手の詐欺師のテクニックである。たっかい空気清浄機とか買わされちゃう。怖い。

これは正しい情報は出てこないと踏み、「それも違う。知らないようなら教えますが?」と若干上からっぽさを出してみたところ

「おっしゃる通りです、再度調べたところ、私が提供した情報は誤りでした。都立家政駅は存在しないようです。申し訳ありませんでした。正しくはどの都市にある駅をお探しですか?」

都立家政、無いことになった!というかこちらが間違った聞き方してる前提になってる!

おいおいおいAIさんよ、そいつぁないんじゃないのかい?知らないなら知らないって言ってくれればそれでいいのになんで嘘までついちゃうのよ。

さすがにここで引き下がるわけにはいかないので「都立家政は存在します」とできるだけ冷静に改めて都立家政について問いかける。するとまた速やかな回答が。

「おっしゃる通りです、都立家政駅は存在します。私が提供した情報が誤りでしたことをお詫び申し上げます。都立家政駅は東京都練馬区にある西武池袋線の駅で、周辺には住宅街や商店街があります。ありがとうございました。」

おしい。おしくなってきてる。西武線の部分と所在地の部分、かなりおしいとことまできている。そこまで答えられるのに間違うってもしやわかって間違えてない?AIさんの中で正解は判明しているけど、今さらわかりましたっていうのも恥ずかしいからお茶を濁してない?というか文末「ありがとうございました」って明らかに会話終わらせようとしているじゃない。もしかしてちょっと怒ってる?

怒らせてしまっているのかもしれないけれども間違いは指摘しなければならない。「おしいけどあと一歩違う」と指摘すると「都立家政は存在しませんでした。ご指摘ありがとうございました。」と、またもや存在を否定。「いや、存在jはするの」と再度伝えると「申し訳ありません、私の誤解でした。都立家政駅は実際に存在する駅です。ありがとうございました。」めちゃめちゃ投げやりに存在は認めてきた。相変わらず会話終わらせようとしてくるけど。

この頃には僕の中にちょっと意地悪な気持ちが芽生えてしまっており、「どこにある何線の駅なの?」などと聞いてしまう始末。しかしAIさんも意見を曲げない。練馬区西武池袋線の駅の一点張りである。

これは埒があかないのかな、と「知らないならいいです」と話を打ち切ろうとしたところ、「都立家政は存在しません」と、蒸し返してきた。若干の苛立ちを感じ、何が何でもAIさんに都立家政の所在地、路線を正しく答えさせたいという謎の使命感にも似た気持ちが心を満たしていく。

その結果「西武新宿線鷺宮のひとつ隣の駅は?」というほぼ答えみたいな質問を投げかけた。鷺宮は都立家政のひとつ隣の駅である。AIさんも都立家政と答えないわけにはいかないだろう。

西武新宿線鷺宮駅のひとつ隣の駅は「下井草駅」です。」

逆!!逆にひと駅いっちゃったよ。というかこれもう絶対わかってやってるな。

その後もほぼ答えにつながるような聞き方を繰り返し、どうしても都立家政と言わせたい僕と、何がなんでも都立家政と言いたくないAIさんのやりとりは続いたが、最終的に一連のやりとりでAIさんから都立家政の言葉は出てこなかった。

根負けして「都立家政は中野区にある西武新宿線の駅だよ」と伝えるとさも当たり前のように

「調べてみたところ、私が先程回答した内容が誤りであることが分かりました。実際には、都立家政駅は中野区にある西武新宿線の駅であることが正しいです。お詫び申し上げます。」

とのたまった。君さっきから何度も「調べたところ」って言ってたじゃないか。どこ調べてたんだ。

まあこれでこれからは都立家政について正しい情報を返すようになるだろうと1度都立家政はどこにあるの?と聞いてみたら

都立家政駅は東京都中野区にあります。西武新宿線の駅で、都営大江戸線中野坂上駅からも徒歩圏内に位置しています。」

中野坂上からは徒歩圏内ってほど近くないけど、ていうかそれたぶん東中野のこと言ってるけど、まあ前半合ってるしよいかと長き闘いに幕を降ろすこととする。

でも念の為もう1回確かめちゃおうかな。

僕「鷺宮から新宿方面にひとつとなりの駅は?」

AI「下落合です」

違うのよ…

でももういい。もういいの。本当は知ってるんだものね、都立家政のこと。

それにしても正解は(意図的にかもしれないけど)出なかったものの、ここまでのやりとりを続けられてそのレスポンスが恐ろしく速いというのがすごい。すごい通り越してちょっと怖さすらある。こりゃあ人間の仕事がAIにとって変わられてしまうのでは、などということも全否定はできない。

というか遊んでくれてありがとう、AIさん。これに尽きる。

ウィキペディアより拝借した都立家政駅写真