普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

ラーメン1杯食べにいくのにそれなりの葛藤あり

昨日は1週間ぶりの出社。子が生まれて初の出社であったため仕事で関わりのある方々からお祝いの言葉をもらう。子が祝福されて嬉しい。まだ産後1時間くらいしか会えてないけど。

何はともあれ出社日である。以前から主張し続けているように出社の醍醐味はお昼ご飯である。今の家の周りは昼休みに徒歩で行けるような範囲での飲食店はかつてここらいで飲食店狩りでもあったんじゃないかなというくらいに皆無なので、会社周辺の飲食店の多さを出社時に楽しむのは正しいお作法であると言えるのだ。

仕事もそこそこにお昼を迎える。まだいくお店は決定できていない。前日に夜更かしをしてしまった影響で若干食欲に不安がある。脳では濃い味おかずでがっつり白米を求めているのだけど、僕は知っている。この欲望に任せて中華とか、あまつさえとんかつ屋などに行ってしまおうものなら、心のそこから待ち望んだ至高のおかずたちを食べ始めて3口くらいで「あ…まずいぞ」と思い、半量食べない頃には「おなかいっぱい…ごめんんさい、ごめんなさい…!!」となる。

僕も四十路。いい加減自分が悲しい生き物になっていることは自覚してきた。ここはきちんとハンドルを切って安全運転といこうじゃないか。

がっつり白米実行不可能であるときの対応策もまた僕は知っている。麺だ。こういうときは麺に限る。と、これで家系豚骨醤油ラーメンに流れてしまいがちであったのが少し前までの僕だ。しかし思い知らされた。がっつりいけねえってのにそんな油っこいのいけるわけねえでしょ、と。少し考えればわかる理屈なのだけど、まだいけると信じたい自分がいたのだろう。

繰り返すが僕は四十路。幻想は捨てよう。方向性は麺。目指すはさっぱり。そうなるとかなりお店は限られてくる。そこまでフィルターがかかったところで思い出した。

近所に鯛だしラーメンを出すお店があって、そのラーメンがけっこう美味しいらしい。だけど少し量が少なめなのでそれが難点であるという。鯛だしということはスープはうしお汁に近いものだろう。こってりする要素がない。そのうえ量が少ないというのはこの時の僕にとっては有利な条件でしかない。半ば勝利を確信し鯛だしラーメン屋に向かった。

お店に到着。入店するやいなや魚介臭の洗礼を受ける。思っていたのとなんだか違うような気がするけど、イカも煮てるときのにおいはどうかと思うけど食べるとおいしいのでその現象に期待することとした。

お店は女性ひとりで切り盛りされており、カウンターにはエプロンや髪留めが設置されれており、女性に寄り添ったお店なのだなというのが見てとれた。量が少なめというのも女性にとってちょうど良い量を目指した結果なのかもしれない。そういうお店は少なそうだし、良いことだと思う。何より量は僕みたいな狭小胃袋人間には助かるなあ。

ラーメンを待つ間にもお客さんが次々と訪れていた。その中の女性客に向かって店主が「こんにちはー」と声をかけた。

店主「今日はお仕事ですか?」

客 「ええ…まあ…」

店主「この間はどうも!なんだか色々ごちそうになっちゃって!」

客 「あ…はぁ…、いや、あの、このお店初めてで…」

店主「ごめんなさーい!!」

という聞いているこちらが赤面しそうなやりとりが展開されていた。しかし華麗すぎるひと違いであったため1周回って清々しさすらあった。ちなみに店主はその後に来店したお客さんにも話しかけていたりしていたので物怖じしないタイプの性格のひとなのだろうな。羨ましい性格。

そんなひと違いラーメンがこちら。

ひとは間違えてもラーメンはきちんと出てくる

大勝利の味がした。鯛って骨だけ煮ても相当なうまみの詰まった汁が出来上がるのでそれを他のダシ(たぶん貝とか)まで加えて調整してるのだろうから負けるわけがない。不敗伝説更新である。量に関しては個人的に少ないとは思わなかったけど、何しろお店を教えてもらったのが元ラガーマンおじさんだからな。東京ドームでストレイテナーのライブやるようなもんだよな。動員可能人数と会場キャパの乖離がすぎる。そこを言うと僕のキャパはリキッドルームくらいなので実にちょうど良い。わかりにくい喩えで申し訳ねえ。

こうして無事ちょうどよい量の昼食を食べ終え、オフィスに戻りラガーさんに「鯛だしラーメン、おいしかったです!」と報告することで脆弱胃袋制圧作戦完遂となった。

1回お昼ご飯食べるのになにをごちゃごちゃ言っているのかと思われてしまうかもしれないけれども、量を食べられなくなってくると1食の価値というのは必然的に上がってくるというものだ。味濃いおかずで白米をわしわし食べたいという憧れを心に抱きながら。