普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

野生のボーナスステージに坩堝を見た

秩序というのはいとも簡単に乱れるものである。

どれほど平和に暮らしていたとしても、ほんの少しいつもと違う要素を加えられただけで争いが起きてしまう。昨日もそんな光景を目にした。

妻と出かけた帰り道、いつも通り川沿いを歩いていた。この川にはカルガモが棲息しており、水辺に箱座りしたり川にぷかぷか浮いていたりする。なんとも平和な存在である。日々癒しを与えてくれる愛くるしい存在だ。

昨日もカルガモがいることを確認し、しばし眺めるかと妻と足を止めたがどうにもいつもと様子が異なっていた。少なくないカルガモたちが右往左往していたのだ。

よくよく見ると誰かが餌を撒いたようで我先にと餌に群がっていた。そしてその中でも食欲旺盛なカモが餌を独り占めじようと他のカモを牽制していたのだ。

牽制するだけならまだよいが、牽制された側も怯まなかったりすると追いかけ回したりしていた。挙句最終的には攻撃までしていたのだ。なんか鈍い音していたし。

ショック…!!

カモのそんな暴力的な一面、見たくなかった。野生に生きるものとしてやるときゃやるのだな。平和にぷかぷか浮いてたまにスケキヨムーブをかましているだけでやっていけるほど甘くはない。うっすらわかってはいても目の前でアグレッシヴな動きを見せられて素直に受け止めることが出来なんだ。

アイドルだってうんこするし極悪プロレスラーだって雨の中に子犬が捨てられていたら連れて帰る。そういうことだよなと自分を納得させるしかない。この年齢でまたひとつ大人の階段のエクストラステージをこなすことができてよかった。

カモが暴力的になるほど盛り上がりに盛り上がっていたが、川沿いに棲息する生き物はカモだけではない。よく見たら鳩もいたし、ネズミまで集まっていた。みんな必死なんだよな。あんなボーナスステージみたいな状況逃すわけはない。もはやその光景は坩堝、ほぼフェスであった。そう考えると乱闘くらい起こるか。ただ、カモは異種族にまでは手を出すことはしていなかったのでわきまえている感はある。ヤのつく自由業の方のようではあるが。

この秩序を乱す魔性の餌、妻は撒かれる瞬間を目撃したことがあるらしい。車で現れ一瞬停車し餌を撒いて速やかに車で走り去って行ったそうだ。インベーダーゲームのUFOのようだ。本当にボーナスステージっぽさがある。まあ、本人もたぶんやってはいけないことだという自覚があるからゆったり餌を撒くということをしないのかもしれないけれど。

ところでこのボーナスステージ、人間に置き換えてみるとどうだろう。

とある集落。ひとびとはとても平和に、めちゃくちゃ仲良く暮らしている。そんな集落のど真ん中に"誰がいくらでも持って行ってよい5億円"を設置するのだ。

これは揉める。1人が全部持って行っても良いわけだから、当然早いもの勝ちだ。この手の話は平等に分けるという意見も出るとは思うが、最終的には強欲な誰かのたがが外れて阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられること請け合いだ。普段優しくしてくれる隣の若奥さんなんかがバトルロワイヤルを勝ち抜いちゃったりするかもしれない。ショッキング…!

しがらみのある人間同士でもそのくらいにはなるのだから、野生に生きるカルガモならばバトルロワイヤル待ったなしもやむ無しですな。

でも本当に5億円あったら争いに巻き込まれたくないので僕はその集落から去るな。お金より平和と秩序、大事。

平和な頃のカモたち