普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

両鬼の茶番であった離縁騒動

「泣いた赤鬼」という話がある。ざっくりといえば心優しい赤鬼が人間と仲良くなりたいという願望を友達の青鬼の手を借りて果たすというお話だ。その代償として元来の友人を失ってしまうという話でもあるのだけど。詳しくはウィキペディアパイセンにご説明を受けていただければ。

まず、赤鬼は鬼界のなかでも相当に異端であったのだと思われる。鬼からすれば人間は食糧であり虐げる対象である弱者だ。その人間と仲良くなりたいというのだから鬼界でも友達が少なかったんだと思う。

このお話には赤鬼の他は青鬼しか出てこないけど、黄鬼だって紫鬼だってビリジアン鬼だって存在してはいるだろう。しかしこの赤鬼は変わり者、有り体に言ってしまえば絡みにくいタイプであったため孤独であったというわけだ。

わかる、わかるよ。僕も高校時代、メタルに魂を捧げたがために全然友達が出来なかった。周りと違うことを望むというのは強いハートが必要なんだ。友達も皆無だった。本当は僕が留年してて絡みづらかっただけだろうけど。

赤鬼はその後も人間との接触を試みる。

おいしいお菓子がございます

お茶も沸かしてございます

って看板まで作って。しかしまったくうまくいかず、それどころか状況が悪化する始末。怪しいものな、明らかに。挙句癇癪を起こして看板を破壊したりしてしまう。そこに現れる青鬼氏。ぷんすかしている赤鬼へ赤鬼と人間の仲をうまいこととりもつことを提案する。その内容は青鬼が里で暴れ、赤鬼がまったくのあかの他鬼(他人的な)として青鬼を成敗することで人間からありがたがられて人間ちゃんと急接近❤️ってなものだ。

青鬼、どんだけいいやつなんだよ。と、思いがちではあるが、実はこれ、青鬼の周到な作戦であったのではないかと思うのだ。

青鬼が里を襲う悪になりすますというくだり、暴露しようと思えばいつでも暴露できる。赤鬼を後々ゆする材料になるわけだ。赤鬼がこの事件の後さんざん人間と懇意に過ごした後に事件の真相を暴露することをほのめかすことによって赤鬼に心理的ダメージを与える。そして金品を要求するのだ。青鬼はそこまで考えてやっている。善意だけであのようながばがばな作戦を提案するとは思えない。

などと意地の悪いことを考えてしまったりもしているが、実際のところ恐喝目当てではあるわけないにしろ、作戦を実行したら赤鬼と青鬼が共に行動することは御法度となるわけで、赤鬼だってそれをまったく見抜けないほど考えなしではないだろう。心のどこかで青鬼と離縁をたくらんでいたのでは。さてはこいつら仲良くないな。

お互いそれとなく縁を切るための方法を模索した末の里襲撃作戦ということだったのでは。腹黒いなあ。やっぱ鬼は鬼だな。

そうなると最終的にしばらく会わなくなった青鬼に会いに行き、旅立ってしまった青鬼不在の家の前で泣き濡れるというこの物語のコアとも言える部分についてはどう解釈したらよいのだろう。

これはあれか、青鬼が赤鬼の訪問を予測してベトコンのスパイクボールでも仕掛けてたか。そりゃそんなものが当たれば泣いちゃう。泣き暮れる。ほんと仲悪いな、この2鬼。

どうしても物語を素直に受け止められない大人になってしまった僕が1番邪な存在であるというのはいうまでもないが、大事なものって近くにあると気付きにくいよねという教訓めいたものを伝えたかったのかなと思わないでもない。それか、大衆に迎合したければ魂を売れということか。

そろそろ節分でございますからな。心の鬼を追い出すどころか他のひとの心から追い出された鬼をうちで面倒みちゃおうかな。おいしいお菓子もございます。お茶も沸かしてごさいますっつって👹

 

写真は鬼っぽさを感じられる可能性を捨てきれない龍。

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今週のお題「鬼」