会社の近くにとんかつ屋があり、そこのヒレカツがなかなか好きでありつつも最近の昼食戦線劣勢を鑑み最近は突撃を避けていた。しかし、「今日ならいけるのでは…!」と、久々に勝機を見出し思い切って入店、ヒレカツにありついたのだった。
結果、ちょうどよい腹具合で食べ切ることができ、満足な昼食として勝利と言えただろう。
が、それはまあよいのだ。ヒレカツはうまかった。それでいい。それよりも店内での出来事というか、空気というかそんなものが普段では感じることのないものであったことの方が印象深かった。
入店後、客は僕しかおらず、オーダーをしてヒレカツをいまかと待ちわびていた。すると老人よりの中年、かといって壮年というにはなんだかいまいちあてはまらない男性二人組が入店してきた。
そのうちの一人の男性がまあとにかくやかましい。喋りっぱなしなのである。しかもその話す内容というのが昭和のコメディアンのようなのだ。しかもおもしろくないコメディアン。
入店するなり若い大将に向かって「くしゃみした?くしゃみした?」と絡んでいた。常連ではあるようだ。くしゃみとは?とその意味を考えていると「今マスターのこと噂しながらきたからよ、くしゃみしてんじゃねえかと思って」だそうである。昭和〜。
そしてしきりに連れ合いの男性に話を振りたがる。連れ合いの男性の名は「まさおちゃん」だ。なにかというと「な?まさおちゃん」とまさおちゃんで話を落とそうとする。黙るまさおちゃん。まさおちゃんは寡黙な男のようだ。
その昭和おじさんはまさおちゃんと食事に行くことを家人に説明をしていたらしく、その件に関してまさおちゃんに「くしゃみした?くしゃみした?」と聞いていた。さっき一回すべってるのにすげえハートの持ち主だな。そのあたりも昭和なメンタルであるようにも感じた。
その後話題は家に不在時のクーラーの是非について話していた。おじさんはちょっとの外出ならクーラーはつけっぱなしにするという。
対するまさおちゃんはむしろクーラーはほぼつけないらしい。寡黙で忍耐強いまさおちゃん。そりゃあのおじさんとご飯来れるくらいだから暑さなど、といったところだろうか。
昭和おじさんはまさおちゃんがクーラーをつけないことで熱中症になってしまうのではとしきりに心配していた。このくだりでまさおちゃんて20回は言っていたと思う。
・わかる?まさおちゃん
・なあ、まさおちゃん
会話の半分くらいは上記ふたつの言葉で埋められていたと言っても過言でないくらい、そのくらいのインパクトはあった。
絶対絡みたくないタイプだ。上司だったら本当に病むかもしれない。
とんかつやのマスターも若干引き気味だったと思うのだけど、あの手のタイプのひとはそういうことはお構いなしなのだろうな。小心者な僕からすればほんの少し羨ましく感じる部分もある。ほんっのすこしな。
しかし普段全く絡みのないタイプのひとを間近で、言ってみればライブとして感じられたのはよいことだったと思おう。
でもあのおじさん、前もこのとんかつ屋にきたときいたと思うんだよな…
リピートはしたくないなあ。
肝心のヒレカツですけどもこちらとなります。
うまそうじゃろ。
お近くに寄った際には是非。
そのときはまさおちゃんもぜひ。