普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

ロバと鶴二郎

ロバート・トゥルージロというベーシストがいる。元Suicidal Tendenciesでいろんなバンドを経てMetallicaのベーシストとなっているいわゆるスターベーシストなのどけど、彼の名前を聞くたびに思い出すことがある。

あれは僕がまだバンド活動を活発に行っていた頃。2枚目の自主制作音源を作成し、地方へどさ回りに行っていた時だった。

金銭面の余裕はないし、機材もわりかしたんまりあったので移動は車だ。車内で過ごす時間も長い。そんな滞在時間の長い車内での過ごし方=豊かな時間の過ごし方となるわけだ。

とはいえ、その当時の僕たちはいかんせんテンションだけで生きていたフシはあった。移動中の車内でもそれはいかんなく発揮される。冒頭のロバート・トゥルージロがMetallicaに転籍したばかりのころだったので当然話題に上がる。そこで誰かが言うのだ。

「ロバート・トゥルージロってロバと鶴二郎なんじゃね?」

と。じゃね?じゃねえよ。ていうかどういうことだよ。なんだよ、その日本昔話みたいな響き。

長時間の車移動。そして時間は深夜。そういうことを言い出してしまうのはわからんでもない。それを差し引いてもまあひどい。

挙句ロバと鶴二郎がどんな話であるのかという創作がはじまった。それはある意味クリエイティブかもしれない。入り口はしょうもないところからではあるけれど。

細かい内容は忘れてしまったけど、ロバと鶴二郎の絆から織り成される人情ものであったように思う。テンションから繰り出した割には意外に良識のあるストーリーだ。

鶴二郎はおそらく貧しいし、ロバは年老いてくたびれているだろう。そんな一人と一匹が出会い、数々の苦難を乗り越えて行くような話、本当にあの頃の僕らが創作するだろうかと怪しい部分はありながらも思い出は美しいことにしておいたほうが人生少しは豊かだ。そのようにしておこう。

ちなみに両者には実物のボディが用意されていた。メンバーのドラマーがツアー中に絶対いらんだろうというおもちゃを買う癖があったのだけど、そのときもレゴを買っていたのでロバと鶴二郎は急造されたのだ。ほんと不毛。そこまで込みで不毛。

ツアーっていうとこういう車内の思い出というものも結構多い。よくやってたものだ。ほんとに好きだったんだな、音楽。

他にも運転手要員でついてきてもらったのにツアー前半で高速道路上で免許取り消しになったスタッフの話などがあったりするのだけど、その話はまたいずれ。

 

ついでに言っておくとロバート・トゥルージロはSuicidal Tendenciesにいたときのほうが今より好きだったなあ。

ロバと鶴二郎として分離して両バンドでかつどうしていけばいいんじゃないかな。