普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

キャンサークラブ

美味しいものが食べたいと思ったときに真っ先に思い浮かぶ食べ物はなんだろうか。ひとの数だけ答えがあるだろう。あるひとは普段よりちょっといいお肉を。またあるひとは高級店のスイーツを。それぞれだと思う。

では僕はどうなのか。そう聞かれたら即座に、脊髄反射でくい気味に答える。

カレーヌードルですよ、と。

なんならちょっと怒ってるかもしれない。それくらいにカレーヌードルが好きだ。最後の晩餐にチョイスされる可能性は大いにありえる。

なにせ、手術の前日に絶食しなければいけないのにこっそり食べてしまう程である。そして手術がはじまり器官にチューブを挿入時に吐き戻してしまい、お医者さんから「食べちゃったんだねぇ…」とため息混じりに言われ、麻酔でもうろうとはしていたけど、しまった、バレてしまったと思ったことは覚えている。そこで麻酔の効果で意識を失ったのでそこから先どういうリアクションだったかは知らないけれど。

そんなカレーヌードル原理主義とも言える僕だけれども、たまには良いものを食べるときもある。つい先週末、会社のひとの家に遊びに行き、カニを食べたのだ。

どんな流れだったかは覚えてないけど、なんだかカニを食べようという流れになり、会場(会社のひとの家)が押さえられ、カニが発注された。

メンバーは定年派遣のおじさん、先輩、同じシマの同僚。わりと普段から飲みに行ったりと仲良くしてもらってるメンツなので家飲みしたら楽しいメンバーである。おじさんも先輩もカニなんて久しぶりだよーなどと言いながらその日を待ちわびていたようだった。

当の僕はといえば、カニかぁ…と内心盛り上がりにかけていた。めちゃめちゃアウェイな環境でライブをやっているデスメタルバンドくらいに盛り上がりにかけていたのである。いや、実際あったんですよ、そういうことが。

まあそれは良いとして、なぜ盛り上がりにかけていたかといえば、そもそもカニってそんなに好きでもないなという事があった。甲殻類って思えばそんなに好んで食べない。食べたらおいしいと思うのだけれど。カニは特に殻をむかなければいけないし、魚の骨をとるのを面倒がるくらい面倒くさがりの僕にとっては鬼門ともいえる食べ物だ。

そんなこんなでいまいちだなあと思って迎えた当日。すわ、カニのお手前見せたまえよとばかりにカニを凝視したところ、殻は食べやすくむかれており、その身は肉厚。上等じゃねえかこの野郎、である。

しかしまだ実食前。油断は禁物だ。なにに対しての油断なのかもわからないまま緊張状態を保ちつつその身を口に含んだところ、上等じゃねえかこの野郎、と思った次第である。

要はおいしかったという話で、久々に食べたというのもあるだろうけど、カニ自体そこそこ良い感じのカニを頼んでくれていたようだったので、僕の中のカニ史は前向きな更新をされたのであった。

カニもよかったけど、やっぱり酒を飲みながらぐたぐだと話すのが好きだ。半日くらい結構フルスロットルで飲んでたからな。なので正直最後の方は記憶が曖昧だ。もったいない。

 

相変わらず僕の一番はカレーヌードルというのは不動だけれど、カニもいいやつじゃないかとぐっと印象をあげたのであった。でもカレーヌードルにカニを入れたら怒る。