普遍と平熱

かつてけっこう本気バンドをやっていて、途中で透析が始まったひとの平熱くらいの温度感の話

空気読んだともいえる

今、人工透析をしていて、それは血液透析になるわけだけど、以前には腹膜透析透析というものをしていた時期がある。15、6歳の頃の1年ちょっとくらいだったかと記憶している。

腹膜透析というのは腹膜に透析液を注入し、老廃物などと一緒に体外に出すという方法の透析である。

注入、ということは流し入れる仕組みが必要となる。その仕組みというのが横腹にチューブを常時埋め込んだ状態にしておくことなのだけれど、チューブが身体から勝手に生えてくるわけもないので手術をする。

手術とは言ってもそんなに大きなものでもないし局所麻酔でちょいちょいってやってはい、完成!って感じだからと説明を受けていたので、まあそんな心配もいらないのだろうなと思い手術にのぞんだ

結果から言うと3回失敗した。

今思えばそりゃ失敗もしますよって話である。

まずね、最初の手術のとき、手術中BGMで槇原敬之ながれてますからね。マッキーすよ。マッキー聴きながら手術してんすよ。どんなときもとかいって手術中くらいどんなときもの対象から外せよって話ですよ。

結果、腹膜が癒着を起こしてしまったとかで失敗。再手術が決定となる。時期はクリスマスごろだったと思う。

そして次の手術。忘年会の話してた。お医者さん達。ひとの腹開けながら忘年会の話をしていたのだよ。信じられます?こっちは局舎麻酔だから当たり前のように会話全部聞こえてるんですわ。なんならその忘年会、参加させてくれよってなもので、当然のように手術は失敗した。

また癒着を起こしてしまったらしい。場所が微妙によくないのかなあなどと言っていたと思う。そして再度手術決定。

3度目の正直ともいうけれど、2度あることは3度あるともいう。なんかもう手術台にこんな頻繁に乗ることあるか?とちょっと面白くなってきていた。しかもお医者さんから、いやー、もう常連だね!とか言われちゃってお前が言うなと思いつつされるがままに手術を受けた。

そして予定調和のように失敗した。失敗手術は全て左脇腹に施していたのだけど、あまりにも失敗が続くから発想の転換ということで逆サイドいっちゃう?みたいなことで右脇腹にまたしても手術することになった。それ、2回目くらいで思いつかんかったか。

そして手術当日。この頃になるとあんまり短期間に麻酔打ちまくったせいで身体に良くないからだったからかなにかで麻酔薬を使わない下半身麻酔で麻酔をかけられた。背骨の真ん中あたりに針を刺してかける麻酔である。人体のバグを狙ったかのような手法だし、背中にぶっとい針を刺すとかめちゃくちゃ怖い。実際針を刺すときも数人がかりでがっちりホールドされて、絶対に動かないでくださいね!って念を押されまくった。

麻酔は無事にかかったのだけど、あの感覚は本当に怖いと言うかなんというか。下半身を動かそうとしても少しも自分の意思が伝わらない。ほんとに麻酔とけるんだろうなと結構不安であった。

そんなこんなで逆サイド手術で無事腹膜透析の下準備完了と相成ったのである。

冗談みたいな話だけど、当時はこんなもんかなあなどと思いつつ対応していた。今だったら結構な火種になりかねないのではないだろうか。

医者によくかかっていると色々普段しない経験出来て楽しいといえば楽しい。あの頃僕の手術をしてくれた先生たちは若手だったから、今は結構大御所なんだろうな。マッキー聴きながらひとの腹あけてたなんて話、覚えているものだろうか。

結局腹膜透析は腎臓移植をするまで続けていたのだけど、その移植の入院先でもなかなか色々あった。

その話はまた別なタイミングで。